小さなごちそう

プロダクトマネジメントや日々の徒然について

娘のサマーウォーズ2017を振り返る

子どもたちの夏休みが終わった。

今年の夏休みは小学生の娘にとって特別な夏になったように思う。娘はこの夏、ある「施設」に入り浸っていた。所謂子どものためのMakers Labのようなところで、3Dプリンタやレーザーカッターなどの最新設備を自由に使うことができ、電子工作でもロボット工作でも、布細工づくりでも、ムービー制作でも、とにかく作りたいと思ったものをなんでも作れる場所だ。設備だけではなく機器の使い方を教えてくれるクルーが何人もいて、子どもたちの「こうしたい!」という自由な発想の実現をサポートしてくれる。企業とコラボしたワークショップも多数開催されている。

娘は文字通り毎日この施設に入り浸った。自分でお弁当を作って朝9時に入館し、施設がクローズする18時まで家に帰ってこなかった。

もともと工作が好きで学校で一番好きな科目は図工、図工がある日は早起きするというぐらいものづくりが好きな娘にとって、この施設はまさに「夢のような場所」だった。(ちなみに夢のような場所というのは娘の表現そのままだ)
モーターとLEDを使って水力発電をする装置、などなんだか色々なものを毎日作っていた。

この夏に開催された施設主催のロボコンやデザインワークショップでは、それぞれ特別賞をもらうことができた。(毎度優秀賞は逃すのだが、発想が独特なので特別賞の対象になりやすい)
自分の発想で何かを作り、それを多くの人の前で発表し、さらに賞賛してもらう。これはたぶん娘にとって人生初めての経験だったと思う。
こうした経験を通して、娘は明らかに変わった。これまでと目の輝きが全く違う。好奇心に従って思いのままに行動すると子どもはこうも変わるのか、と我が子ながら驚いた。

娘は少し変わったところがある。興味がある事はに対しては非常に高い集中力と想像力を発揮するのだが、そうでないものはとことん手を抜く。というか側から見ると適当にやってるようにしかみえない。習字を習っているので丁寧に書けば綺麗な字が書けるのだが、興味のない課題だとミミズのような字で誤字脱字も多い。こうしたことが原因で学校の宿題をチェックした時などに度々親子で衝突することがあった。要は「もっとちゃんとやりなさい」という親が求めるクオリティに対してなかなかそこに到達しない。何を求められるのかピンときていないので「ちゃんと」と言われてもよくわからないのだろう。こんな娘を根気よく指導してくれている学校の先生には本当に頭が下がる思いだ。

そんな娘が個性伸ばせる場所を探して色々と模索してきた。絵画教室に通って見たものの、その時間はそれなりに楽しんでいるようだったがやや「お遊戯的」で、親としても娘としてもあまり意義を見いだせなくてやめてしまった。娘用のパソコンを買い、Scratchなどの初等プログラミングツールの使い方も教えてみた。そういえば一時期はマインクラフトにはまっていた。

うちの子はこういう方向なのかなと思っていたところで、娘が学校の友達から聞きつけてきたのがこの施設だった。今年の3月からオープンしていたらしいのだが夏休み直前まで存在を知らなかった。早速申し込んで参加して見ると娘は大興奮していて、まさにこの施設こそ娘が求めていた場所だと判明した。ちなみにこの場所を教えてくれた友達も個性的で独特の発想をする子のようだ。娘はこの子といつも連んで何か作ってるらしい。

この施設を運営するS社長の講演を聞いたがお兄さんの強烈さとはまた異なる独特の存在感、包容力を感じさせる方で、日本の子どもたちの未来を本当に真剣に考えてくれているようだった。

劇的に変化していく娘を見たことで、子どもの教育だけでなく、自分のキャリア観やマネジメントに対する考え方が変化しつつあるように感じる。
言葉にすると当たり前だが、人は個性を活かし夢中になれる環境でもっとも成長するのだ。そうした環境に自らを置くことができるのか、一緒に働くメンバーにそうした環境を用意できるのか。そんな事を頻繁に考えるようになった。

この施設のビジネスモデルの詳細はわからないのだが、どうやら子ども向けのSTEAM教材のR&D部門という位置付けのようで、施設で活動する子どもたちの反応を見ながら教材開発をしているらしい。事業としても実験的な取り組みであるように見えるし、ビジネス的に継続可能なモデルなのかよくわからないのだが、とにかくこの施設の存在に親として非常に感謝している。仮にこの施設が彼らの事業上の狙いを達成してクローズしたり移転することがあっても、娘はこの夏の経験を原体験にして、何年かかかっても自力でこうした場所を探し出したどり着くだろう。そのための主体的な努力ができるんじゃないかと思っている。

長々と書いたがこのエントリーで何を伝えたいかというと、とにかく施設のクルーの皆さんとこの場所を作ってくれたS社長に感謝したい。本当にありがとうございます。皆さんは未来を作る仕事をしています。 

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