小さなごちそう

プロダクトマネジメントや日々の徒然について

ドッグフーディングの落とし穴

f:id:tannomizuki:20100525090005j:plain photo by Mitchel

ドッグフーディング(Dogfooding)とは、自社製品を社員が日常的に利用して、製品の問題点をチェックすることを言う。ユーザー視点で製品の品質やUXを確認することができる。

ただ、ドッグフーディングにはいくつか落とし穴がある。Wikipediaに簡潔にまとまっていたので紹介する。

▼ Eating your own dog food / Criticism and alternative terms

  1. 開発者はユーザービリティや一般ユーザーの知識量を考慮せずに機能追加しがちである。
  2. 「ソフトウェアのアップデートをリリース版からではなくβ版から行う」など、一般ユーザーと異なる利用体験をしていることがある。
  3. 自社製品だけでシステムを構成してしまう(一般的にユーザー企業は複数のベンダーの製品を組み合わせて社内システムを構築する)。

個人的に注意しなければならないなと改めて感じているのが、ドッグフーディングによって「ソフトウェアをインストールして導入したあとのUX」にだけフォーカスしてしまうことだ。

ドッグフーディングで開発者が繰り返し経験するのは、製品が設置されて利用可能になった後のUXになりがちだ。つまり、製品のコンセプトや価値を理解し、製品を継続利用することが前提になっている状態でのUXだ。製品を発見してインストールし、試用を通じて製品の価値を理解する、という製品導入に関わる一連の流れは、意識的に機会を作らないと経験することがなくなってしまう。

そうすると、製品に価値を感じて日常的に利用し始めたユーザーの満足度は向上するが、「製品に価値を感じなかった人たち」「製品の価値を理解できなかった人たち」に対しては、永遠に改善が行われないことになる。

 製品の導入過程の問題点についてはについては、定期的にユーザーテストを行って問題点を明らかにすることが重要だと感じている。

 

ところで、元Microsoft CIOのTony Scott氏(現VMWare CIO)が、MS在籍時にドッグフーディングではなく「アイスクリーミング(Ice-creaming)」と呼ぶことにしたと語っている。
Microsoft CIO on a mission to make ice cream out of dog food - Puget Sound Business Journal
「顧客が食べたいと思うようなアイスクリームを作ろう」ということだ。ドッグフーディングの由来は「開発したドッグフードを自分たちの犬に食べさせよう」だから、確かにこちらの方が響きが良い。果たしてアイスクリーミングという言葉はMS社内で定着したんだろうか。