読書メモ:Harley Davidson Japan(HDJ)のマネジメント
昨年、10数年ぶりにバイクに乗ったところ思いのほか楽しく、勢いで大型二輪の免許を取得してしまった。ドラマ「Beautiful Life」でTW200に乗るキムタクに感化されて普通二輪の免許したので、教習所は15年ぶり。以前乗っていたのが120kg程度のFTRだったこともあり、200kgを超える大型の重量になかなか慣れなくて苦労した。(ちなみに普通二輪免許を持っていれば、12回の実技教習/10万円程度で大型二輪の免許が取れる)
そんな経緯で大型バイクを色々と物色しているなかで、Harley-Davidsonの正規販売店を訪問した。店舗の雰囲気はこんな感じ。
ガジェット好き向けに一言で説明すると、Apple Storeっぽい。バイク本体だけでなく、アパレルやグッズも販売していてすっごくオシャレ。
その場でハーレーを試乗。エンジン音と体に伝わる鼓動、軽くクラッチをつないだだけでずるずると前に引きずられるトルク感にぐっと心を鷲掴みにされた。実はハーレーは「革ジャンを来たアウトロー」のイメージが強くて、ファッション的にはDucati Scramblerに惹かれていたんだけど、販売店での経験ですっかり関心が移ってしまった。
興味を持った勢いで車体以外についても色々と調べてみたところ、Harley Davidson Japan(HDJ)のマネジメントがとても面白かったのでメモ。
日本におけるハーレーダビッドソンの状況
- 751cc以上の二輪市場におけるハーレーのシェアは24.2%で首位(2002年当時)
- モノを売るのではなくコトを売るライフスタイル・マーケティングを実践
- 二輪市場が縮小するなかで(1982年に328万台→2002年には77万台と減少)、販売台数を伸ばす(1982年に1099台→2002年には10,869台と10倍に)
- ハーレーオーナーの平均年齢は37歳を維持している。これはバイク保持者全体の平均年齢よりも10歳若い。若い層を新規顧客として獲得できており、ユーザーの高齢化が進んでいない
プロダクトについて
- ハーレーは実用ではなくレジャー用途のバイク
- オートバイを売るのではなく、ライフスタイルを売る
- ハーレーのプロダクトコンセプトは「Look,Sound,Feel」であり、「走る、曲がる、止まる」ではない
- ハーレーの耐用年数は50年以上。一生同じハーレーを乗り続けるオーナーもいる。買い替えではなくカスタマイズで売上を伸ばす必要がある。よって販売した後に顧客と関係を継続する必要がある。
- HOG(ハーレー・オーナー・グループ)というオンライン/オフラインのユーザーコミュニティ
マーケティング戦略
- HDJはマス広告を出稿しない。店舗とイベントを顧客接点として新規顧客を獲得している
- イベントはブルースカイヘブンを代表に年間多数開催。現オーナー以外も来場し、見込み顧客獲得の機会になっている。
- 付き添いでふらっと入店した客が一目惚れして購入を決めてしまうこともある
- 接点をもった見込み顧客の情報をDB管理してナーチャリングする。
HDJの販売店改革
- 元々バイク店の多くは町の自転車店だったため、以前は店内は薄暗く作業場のような雰囲気だった。
- ハーレーの価格は平均200万円以上する高級品。高級品を購入する雰囲気ではない。女性も入店しづらい。
- 「息子が店を継ぎたくなる、彼女を連れてきたくなる店に」
- リテールエンターテイメントを標語に販売店を改革。バイクだけでなくアパレルも販売。
HDJにおける営業部門の役割
- HDJの営業パーソンは販売代理店の経営コンサルタントとして、販売店の経営と業務の改善を指導する。
- HDJは販売店の財務諸表を把握している。
- 販売店を管理するSFAと、顧客を管理するCRMの二本立て
- 認知、来店、試乗、見積もり、購入のプロセスを管理する。
- 購入が少なければどのアクティビティを増やせばよいのか考える。
- 値崩れの原因となるため販売店に対してインセンティブマージンを設けない。
このメモは以下の書籍を元にまとめた。
- 作者: 牧田正一路
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2003/12
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- 作者: 奥井俊史
- 出版社/メーカー: ファーストプレス
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なぜハーレーだけが売れるのか (日経ビジネス人文庫 ブルー み 2-3)
- 作者: 水口健次
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/03/03
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販売店での試乗で経験したのはまさに「Look,Sound,Feel」の体験。
そういえば通っていた教習所でもハーレーの試乗会が開催されており、確かにリアルな接点を意図的に作って新規顧客の獲得機会にしているようだ。
見積もり時はローンプランも提示して手に届く感を与える、「ハーレーはゆったり走って楽しむ乗り物」と説明して配偶者を安心させる、などの本で書かれていた通りの接客も経験したが、まさに狙いどおりの効果をもたらしていると実感したw
はてなブログでブログを書いているオーナーの方もいるが、とても楽しそう。
ケーススタディは当事者にならないとなかなか身にならないつまり仕掛ける側か顧客側かを経験すべきだからとりあえずXL883Nを買うことにした。
ちなみに883のデザインはダイス・ナガオさんという日本人が手がけている。こういう動画も僕から見るとAppleのジョニー・アイブのビデオっぽくってブランドとの距離が近づいてしまう。