日本におけるキャッシュレス社会の推進について
自分用メモ。金融庁、経産省の問題意識や取り組みがよく分かる資料。
- 経済産業省 キャッシュレシュビジョン要約版
- 金融調査研究会提言 キャッシュレス社会の進展と金融制度のあり方
- 経済産業省 キャッシュレスの現状と推進
- 経済産業省 FinTechビジョンについて
- 決済高度化官民推進会議:金融庁
日本はキャッシュレス比率が他国と比べて低いことが問題視されている。2015年の調査によると韓国のキャッシュレス比率が89.1%に対して日本は18.4%と大きな差がある。ただ日本においては結局のところ日常的な決済において生活者・事業者に差し迫ったペインがない。偽札も少ないし現金の盗難リスクも低い。スウェーデンのように冬場は雪で現金輸送が困難といったような状況にもない。もちろんキャッシュレス化が進んだ結果、最終的には社会全体の生産性が向上し生活者・事業者がメリットを享受できるわけだが、決済を行う当事者が課題を感じていない。
プロダクトマネジメントは「誰のどのような課題を解決するのか」が出発点となる。こうした「ペインレス」だったり便益享受までに時間的に大きな遅延があったりする状況で、どのようなプロダクトを作りどう普及させればいいのだろうか。この問いはPMとして非常に興味深い。
結局のところユーザー課題が無いのであれば、強制的にペインを作るか、ゲインを与えるしかないのだと思う。他国の例でいうと、韓国はクレジットカード決済分が所得控除されたりレシートが宝くじになっていたりと、クレカを利用するインセンティブ(ゲイン)を作った。スウェーデンはATMを撤去したり店舗での現金決済を禁止するなど現金利用の不便さ(ペイン)を発生させた。こうした国主導でのペイン・ゲインの導入は日本でも段階的に行われていくのだろうと思うが、各決済サービス事業者はそれぞれのリソースでユーザーにとってのゲインを提供していくと思われる。中国での事例のように電子決済でタクシー初乗り無料、といったバラマキ施策を行うケースも増えるかもしれない。そうした資金力勝負も必要だろうが、PMとしてはプロダクトそのものにユーザーにゲインを提供する仕組みを内在させてみたい。新たなゲインを生むウマい仕組みを発明してみたいところだ。
また、当初は各社が排他的に競争しあうというよりキャッシュレス決済実現に向けて協同することになるのだろうが、ティッピング・ポイントを超えたあとはどのような競争が行われるのか、どのようなプレイヤーが勝つことになるのか想像を巡らすと面白い。