小さなごちそう

プロダクトマネジメントや日々の徒然について

デザイン的プロセスにおける主観の重要性

インサイト調査をどうすれば組織的にかつ再現性高く行えるか考えている。インサイトについて調べるなかで、明治大学 水野誠先生のとても興味深い論文を発見した。

デプスインタビューの経験が豊富なプランナーは「相手の経験を追体験」し,「人生をシェア」することを目指すという.これは,石井 (2009) がいう「対象に棲み込む」行為に近い.その結果,たとえていえば「イタコ状態」になり,当人がいなくても自分が質問に答えられるぐらい一体化することが目標とされる.
広告クリエイターはいかにインサイトを獲得するか?(PDF)

少数者への取材・インタビューで有意なインサイトを得られるのか、という論文。Wieden+Kennedyのプランナーにインタビューした結果がまとめられている。面白い。 

データより自分としてどう思うか、自分の奥さんならどう思うかをシミュレーションする。自分とは性・年齢が違う場合でも共通点を探す。

 

情報をできるだけ頭に詰め込み、寝かせる。最初に浮かんだイメージをメモ。もうひとつは、1対 1 のインタビューで相手の経験を追体験する。

消費者インサイトの獲得(PDF)

 こちらもW+Kのプランナーへのインタビュー。消費者インサイトを獲得する際に、自分のインサイトを起点にするクリエイターはやっぱり多いんじゃないか。自分を起点にして共通点や相違点を浮き彫りにしていく。

事実と解釈を分けることはビジネスコミュニケーションの基本だし、僕のような理系出身者の多くは、客観と主観を分けて主観を出来るだけ排除する訓練を、ある時期徹底して行う。

一方で「対象に棲み込み、イタコ状態になる」という話は、ある種徹底的に主観で物事を見てみる行為だ。下記の黒須先生の記事中でも、観察者の主観の重要性が強調されている。

表面的な客観性を重視するあまり、やたら他人から情報を得ようとしてアンケートやインタビューをする前に、まず自分の頭のなかで、じっくりと仮説を構築し、いろいろな可能性を考慮し、自分だったらどのように考え、判断し、行動するかを考えてみることが必要だといえる。

デザイン的プロセスにおいて主観は重要な役割を果たしているのではないだろうか。そしてこの「主観重視」が、デザイン・シンキングを組織内に浸透させる際の最初の障壁になる気がしている。