Less is more / アルコールとカフェインと糖質のない生活
アルコールとカフェインを断って3ヶ月が過ぎた。そしてランニングを習慣にするようになって2ヶ月、本格的な糖質制限を始めて2週間がたった。
現在のところ体調はとても良い。1年前は84kgあった体重は現在76kg。緩やかに減量し続けている。こんな生活を始めた理由を説明することが多くなったので、経緯をまとめてみる。
飲酒がパフォーマンスに影響する
去年の夏頃から飲み会の翌日は体調がイマイチすぐれず、時によってはその週はずっとパフォーマンスが低い、なんてこともあった。
もともとお酒は好きな方だった。止めるまでは平日に濃い目のハイボールを一杯、休日になるとワインのボトルを1本空けるぐらいは飲んでいた。ただ、どうやら体質が変化したようだ。であれば一度徹底的にアルコールを断ってみるか、ということで禁酒してみることにした。
そうすると1週間ほどで心なしか普段の体調が良くなった気がする。これはいいということで継続することにした。もしかしたら生活習慣を変えて身体のメンテをしなければいけない時期かもしれないと思い、禁酒以外にも色々試してみることにした。つまり自分自身のパフォーマンスを最大化するために、自分の体を積極的にハックしてみようと思ったのだ。
セロトニンで睡眠の質を改善する
実はここ数年、寝つきの悪さと眠りの浅さに軽く悩まされていた。月に1度ぐらいだが、朝まで寝つけずに悶々とする、みたないこともあった。
そこで睡眠の質を改善を試みることにした。カフェインの摂取が快眠を阻害するようなので、まずカフェインも断つことにした。これはコーヒー好きの僕にとっては、禁酒よりつらかった。
人間の体は疲労を感じると睡眠を促すアデノシンという物質を放出する。カフェインはアデノシン受容体をブロックすることで眠気を妨げる。
また、調べてみるとスムーズな入眠にはメラトニンというホルモンの分泌が必要らしい。メラトニンの分泌を促すには、セロトニンが必要でセロトニンの分泌にはトリプトファンが必要らしい。ということでサプリメントでトリプトファンを摂取することにした。
帰宅する前に会社でトリプトファンを飲むと、確かに家に着く頃にはあくびが出てきて寝つきが良くなった。ただどうも翌日の朝にだるさを感じる。サプリを購入したサイトで他のユーザーのレビューを見てみると、同じような症状の人が何人か。どうも体質に合わないらしい。サプリでセロトニンの分泌を促す、というアプローチは失敗だ。
そして色々とセロトニンについて調べているうちに出会ったのがこの本。
仕事に効く、脳を鍛える、スロージョギング 角川SSC新書 (角川SSC新書)
- 作者: 久保田競,田中宏暁
- 出版社/メーカー: 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/09/10
- メディア: 新書
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有酸素運動をすることでセロトニンが分泌される、とのこと。セロトニンは幸福ホルモンとも呼ばれており満足感や精神の安定性にも大きな影響があるという。なるほどということで、この本で推奨されているスロージョギングを始めてみた。
実はこれまで何度かランニングを習慣にしようとしたことがあったが、その度に熱中症になるなど体調を崩して挫折していた。ダイエットを目的に急激にハイペースで走っていたため、体がついてこなかったのだ。
今回は無理のないスローペースで一定時間走って、有酸素運動をすることでセロトニンの生成を促すことが目的。余裕をもって会話できるぐらいのペースで走る。これが思いの外気持ちがいい。酒を飲めないストレス、酒で晴らしていたストレスが、走ることによって解消される。
この2ヶ月で走ることがすっかり習慣化して、平日時間があるときは4km、休日は10kmぐらいは走るようになった。Runkeeperのモニタ表示をApple Watchで確認できる。これまで通知と予定の確認ぐらいでしか使っていなかったApple Watchが、ランニングのサポートツールとして活躍し始めた。
ここまでで睡眠の質は随分改善された。布団に入るとすぐに眠たくなって朝までぐっすり寝てしまう。ここから芋づる式に運動と健康に関する本を読みあさるようになる。
人は走るようにデザインされている
スロージョグの本の中で紹介されていたBORN TO RUNを読み、さらにランニングへのモチベーションが上がる。人間は走るようにデザインされている、というのがこの本の主張だ。狩猟採取時代の人類は走って獲物を追いかけていた。持久力を武器に足の速い動物をスタミナ切れにさせて倒れたところを捕らえる、という狩りのスタイルだった。
BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”
- 作者: クリストファー・マクドゥーガル,近藤隆文
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2010/02/25
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BORN TO RUNに影響されて五本指シューズのVibram Fivefingersも買ってみた。踵にクッションがない靴のほうが、人間本来の走り方に近くなるという。スロージョギングの本で推奨されていたフォアフット・ランと相性が良くとても気に入っている。
「GO WILD」も刺激的な内容だった。狩猟採取時代の人類にとって、獲物を追いかけて走りまわった後が最も学習能力が必要なタイミングになる。狩りがうまくいった理由、あるいはうまくいかなかった理由を考え、次の狩りに活かさなければならないからだ。そのため走った後は脳を活性化や脳細胞の成長を促すセロトニンや脳由来神経栄養因子(BDNF)が分泌されるようになった。運動後に学習効率が高くなるように進化した、ということらしい。
GO WILD 野生の体を取り戻せ! ―科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス
- 作者: ジョンJ.レイティ,リチャード・マニング,野中香方子
- 出版社/メーカー: NHK出版
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現代人は糖質を摂り過ぎている
糖質制限の必要性も狩猟採取時代の人類に由来する。おおよそこんな理屈だ。
- 狩猟採取時代は肉や木の実が主な食料で、炭水化物の摂取量が少なかった。
- 人間のハードウェアは狩猟採取時代から進化していない
- 人類の体は大量の炭水化物を消費するようにデザインされていない。
- 現代のように大量に穀物(糖質)を摂取するようになったのは人類史からみるとごく最近のできごと
- 糖質の過剰摂取が糖尿病をはじめとして様々な成人病の原因になっている。
- 糖質を分解してできるブドウ糖が脳のエネルギー源と言われていたが、脂質から生成されるケトン体もエネルギー源にできる。
- 故に米や麦などの炭水化物(糖質)を摂取を控えて、質の良い脂質を十分に摂取すれば脳は活動できる
もともと夕食には炭水化物をとらないライトな糖質制限をしていたが、こうした知識を得たことでもう少し踏み込んで糖質制限することにした。朝昼晩の3食を通じて、米・麦・芋類をとらない(ただ、コーンや根菜類などは無理に排除しない)。
ケトン体の生成を促すココナッツオイルやMCTオイル(中鎖脂肪酸)を豆乳に混ぜて毎朝飲むようにした。
MCTオイルについては下記の本で知った。グルテンやトランス脂肪酸の問題についても詳しく書かれている。
スーパー糖質制限をするようになって2週間が経つが体調は良好だ。食事のあとに眠気が襲ってこないのも良い。糖質を摂取すると血糖値が上がる。血糖値を下げるためにインスリンが放出され過剰に血糖値が下がる。この作用で食後に眠気を感じるのだ。
ケトン体の検査シートで調べてみると、一応ケトン体は出ているようだ。
糖質制限についてはゆうきゆう先生のマンガが面白くてわかりやすい。
人は腸内細菌と共生している
次に興味を持ったのが腸内細菌だ。人間を含め動物の腸内には100兆を超える細菌が共生しており、食物の消化を助けている。腸内細菌が人間の体の働きに影響を及ぼす物質を放出している。人間は腸内細菌の助けなしに生きることは困難である、ということだ。
腸内細菌の活性化のために、夜にヨーグルトと少量の冷えた白米を食べるようにした。白米は炭水化物だが、冷えた白米は「難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)」に変質して食物繊維と同じ働きをする。
腸内細菌のなかにはセロトニンなどのホルモンを生成するものもあり、腸内細菌の活性化状況が人の精神状態を左右する。また、人間の細胞の数は60兆個であり、実は腸内細菌のほうが数が多い。そう聞くと生命体としてどちらが主客かわからなくなる。
Less is more
アルコール、カフェイン、糖質を制限すると、外で飲食するのが本当に難しくなる。水かノンカフェインかつカロリーゼロ表記のある飲料にしなければならない。普通の飲食店には糖質抜きのランチメニューには存在しない(糖質制限メニューを作ってくれている妻に感謝)。見渡せば我々の周りにはアルコールとカフェインと糖質で溢れかえっている。社会システムが糖質を摂取するように作られているようにも見えて来る。
何かを摂取することでなく制限すること、身一つで走ることがベーシックな健康や充足感に繋がるという事実は、個人的には大きな価値観の転換だ。こうした生活が万人にとって正しいわけではなく、たまたま僕の状況にマッチしていたのだろうと思っているが、しばらく続けてみるつもりだ。