デザイン思考によるイノベーションのわかりやすい例
徹底的なユーザー観察、素早いプロトタイピング、というデザイナー特有の問題解決手法を製品開発プロセスの川上に適用しよう、というのがデザイン思考だ。
デザイン思考を生んだIDEOのCEO、ティム・ブラウン氏は次のように語っている。
デザインは以前より、開発プロセスの川下に位置づけられていた。つまりデザイナーは、イノベーションの実作業である初期段階では何もすることがなく、固まったアイデアに化粧を施す。そのように考えられてきたのである。
(中略)
デザイナーの役割はこれまで、開発されたアイデアを消費者にとって魅力的にすることだった。しかし現在、デザイナーには、消費者のニーズやウォンツによりマッチしたアイデアを生み出すことが期待されている。
従来のデザイナーの役割は戦術的であり、デザインによって生み出される価値は限定的だった。しかし現在、デザイナーに求められているのは戦略的な役割であり、これにより画期的な新しい価値が生まれてこよう。
- Harvard Business Review 2008年12月号 「優位」の教訓より
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デザイン思考とは、プロセスの川下で本質的な問題解決に繋がらないプロダクトの「お化粧」をやらされてきたデザイナーたちの反逆であるとも言える。
デザイン思考によるイノベーションの具体例は、IDEO創業者たちによるデザイン思考の本でも紹介されているのだが、個人的には今ひとつピンとこなかったりする。
(余談だがHBR2016年4月号でZibaの濱口さんが、IDEOのデザイン思考でイノベーションが生まれることはまれで、デザイン思考ブームはマーケティングの産物である、と語っていて面白い)
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デザイン思考によるイノベーションのわかりやすい例がないかと思っていたところ、こんな記事があったので引用して紹介する。
「例えばごく簡単な例として、風呂場のカビ取り洗剤のデザインを考えてみましょう。ボトルそのもののデザインももちろん重要ですが、実際の利用シーンをよく観察すると、中身の薬剤が無色透明では後で洗い流す時に散布した場所が分からなくなってしまうということに気づく。そうすれば、薬剤に色を付ける、泡状にするといった新しいアイデアが浮かんできます。このように、デザイン思考を製品開発に取り入れることで、使い心地の良さという新しい価値を提供できるわけです」
- 「デザイン思考」は企業やビジネスをどう変える? - 日経ビジネスオンラインSpecial
これがイノベーションなのかと言われると異論があるかもしれないが、確かに「無色の洗剤だと洗い流したかわからない」という問題は、実際の利用シーンを観察することで初めて発見できそうだ。おそらくユーザーがペインポイントを自覚しておらず、ヒアリングや定量的な市場調査では問題を発見するのは難しそうに思える。
実例かどうか定かでないが、デザイン思考の有効性をイメージするための具体例としてはとてもわかりやすい。