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commはどうすればLINEに勝てるのか

この記事はなかなか的を射ている。

ブッチNEWS - comm事業縮小!? の噂、原因はぺんぎん人間って本当?

「comm」のマーケティングで一番間違っていたのは、音声通話の音質を主力とした点だ。無料で、ちゃんと使える通話音質自体は、他社との大きな差別化、低収入な学生等への導入フックにはなる。先行する「LINE」の顧客の不満点は確かに音質だった。しかし実際に「LINE」を利用している人たちの多くは、<スタンプで感情を交換しあう>特徴を持ったチャットをメインに利用している。なぜなら無償電話は、3Gで利用した場合通話品質が悪くなりがちなので、あまり利用しなかったからなのだ。これ(不満と実情の違い)に気が付かなかったことは敗因の1つだし、実際多用されるチャットのスタンプに感情移入をしやすいキャラクターをあまり持ってこれなかったのも「comm」の残念な点だ。

バリュー・プロポジションを考える上ではPoints of Difference(差別化ポイント)だけではなくPoints of Parity(等価ポイント)が重要になる。つまりcommは高音質通話で差別化を図るだけでなく、スタンプによる感情交換においてもLINEに対して等価な価値を提供する必要があったというわけだ。「commでいいじゃん!」と思わせるためにはまず差別化よりも十分に同質化すべきだったのだ。

commのスタンプ

commにはLINEと一見似たようなスタンプが用意されているが、並べて比較して見ると違いに気がつく。

LINEのスタンプは顔が大きく描かれており一見して感情を読み取りやすい。commのスタンプは頭身が大きく体全体が描かれているものが多く感情が伝わりにくい。そのためスタンプによる感情交換(ノンバーバルなコミュニケーションの楽しさ)という点において、commはLINEと同質のベネフィットを提供できていない。

逆に仮面ライダーなどの有名キャラのスタンプはデフォルメされすぎている。LINEではデフォルメされておらず、みんなが知っているおなじみのポーズをしたキャラが多いようだ。

どうすればLINEに勝てるのか

じゃあお前ならどうするんだと言われるとなかなか難しい。

論点は、

  1. (同質化)LINEと同等かそれ以上の楽しさを得られるノンバーバルコミュニケーションを提供すること
  2. (差別化)LINEにない機能的価値を提供すること

といったところだろうか。

小一時間、ひとりでブレストして思いついたのが次の二案だ。

 

1.スタンプショップをオープン化する

申請ベースで誰でも自分で作成したスタンプを公開し、他のユーザーに提供できるようにする。さらにPixiv等とタイアップしてスタンプを公募する。クラウドソーシングによってより表現力が豊かなスタンプが集まる(かもしれない)。

commにはノンバーバルなコミュニケーションの手段としてトーク画面でゲームが楽しめる機能が提供されているが、スタンプを送る動機とゲームをする動機は本質的に異なるので、LINEに対する同質化の手段としてはマッチしないと思われる。

 

2. commユーザーに固有のメールアドレスを発行する

3G環境下ではいくらコーデックの品質がよくても高音質な通話が成立しにくい。音声品質以外に差別化要素となる機能を提供したい。
LINE等のツールによってメールの使用頻度が減ったとはいえ、携帯に新着が通知されるメールアカウントが無いと不便なシーンはまだ多い。そこで、commユーザーにhoge@co-mm.comというメールアドレスを発行して、MMSやメールを着信できるようにする。LINEに対してではなく、キャリアメールに対して「commでいいじゃん」と思わせるのだ。

(と思ったら、非commユーザーとやりとりの手段として、すでに提供されている機能だった)